最後に幸福な家庭をつくる七原則が紹介されている。
1.口やかましくいわない
2.長所を認める
3.あら探しをしない
4.ほめる
5.ささやかな心づくしを怠らない
6.礼儀を守る
7.正しい性の知識を持つ
口やかましくいわない
リンカーン夫人やユージェニー皇后、トルストイ夫人等の例を挙げているが、いずれも口やかましい小言の結果は、彼女らの生涯に悲劇をもたらしただけだった。もちろん小言を言われ続けていた方もたまったものではない。
ニューヨークの家庭裁判所に十一年勤めていたベシー・ハンバーガーは、数千件の離婚訴訟を調べた結果、夫が家を出るおもな原因は、妻が口やかましいからだと言っている。
長所をほめる
ここではディズレーリの例を挙げているが、彼はお金目当てで三十五歳の頃に十五も年上の金持ちの未亡人に求婚をした。なんて話だと思うが、その結果は非常な成功で、このふたりは幸福な結婚生活を楽しんだ。
彼女は、若くもなければ美人でもなく、頭がいいわけでもなかった。文学や歴史の知識も無く、言い間違いも多くした。しかし、彼女は男性の心を理解していた。夫の知能に対抗するという考えは少しも無く、夫の良き協力者であり、友であり、助言者であり続けた。彼女は夫の仕事に対して絶対の信頼を寄せていた。
ディズレーリにとって、彼女は完全な妻では無かった。しかし、彼女の長所を十分に伸ばす賢明さを持っていた。
あら探しをしない
離婚問題研究の権威ドロシー・ディックスの語るところによると、世のなかの結婚のうち、五十%以上は失敗に終わっているそうだ。新婚の夢が破れ、離婚の憂き目を見る原因のひとつは、あら探しをすることだという。
ほめる
フランスの上流社会では、男性は夫人の服装について一晩に何度も褒めるものと子供の頃から教えられている。社会で活躍している女性が結婚すると、これまで通りのキャリア形成が難しくなることが多い。
女性が夫によって幸福を与えられるとすれば、その幸福は、夫の賞賛と愛情以外のどこにもない。そして、その賞賛と愛情が真実のものであれば、それによって夫の幸福もまた保証される。
ささやなか心づくしを怠らない
女性は、誕生日や記念日を重視する。男性にはわからないが、忘れてはならない日も若干ある。妻の誕生日と自分たちの結婚記念日だ。
結婚の幸福は、ささやかな心づくしの集積によって得られる。この事実に気づかない夫婦は、不幸な結婚生活を送らねばならないだろう。
礼儀を守る
配偶者の選択はもちろん重要だが、その次に重要なのは結婚後の礼儀である。
妻は夫にも礼儀を守るべきである。口やかましい女のそばからは、どんな男でも逃げ出します。夫に対してはディックス女史がこのように言っている。
男が仕事にそそくだけの熱意を、なぜ家庭にもそそげないのか、その理由が、女性にはわからない。百万の富をつくるよりも、やさしい妻と平和で幸福な家庭を築くほうが、男にとっては、はるかに意義のあることだが、家庭円満のために真剣な努力を傾ける男は、百人にひとりもいない。人生でもっとも重大なことを、成行きにまかせている。妻に対しては、強圧的な態度をとるよりも、やさしい態度を示すほうがよほど有効なのに、男はなぜ後者を選ばないのか、女には理解できない。
妻を思いのままに動かす術を、夫はみんな知っているはずだ。少しほめてやれば妻が満足することを、夫は承知している。古い服でも、それがよく似合うといってやれば、妻は最新流行の服をほしがらないことも知っている。妻の目にキスをしてやると、彼女の目は見えなくなり、唇にキスをしてやれば、ものがいえなくなることも、夫は十分に心得ている。
夫はそれくらいのことは十分知っているだろうと、妻は思っている。彼女は自分を喜ばせる方法を夫に教えてあるはずだ。にもかかわらず夫はその方法を用いようとせず、彼女と争って大損害をこうむっても、お世辞をいうよりはましだとでも思っているらしい。これでは妻が腹を立てるのも当然だ。
ドロシー・ディックス