会社というものは創業から10年で9割が廃業するとも言われている。直近、数年のうちに起こった経済危機の最中にも事業を続けられず、廃業した例も多数ある。
本書籍では日本企業に共通する衰退のメカニズムを研究し、解き明かしている。経営者、企業再生に関わる方々及び広くビジネスパーソンに役立てて頂きたいとしている。なお、本書の内容は筆者が所属してきた企業の見解を示すものではなく、筆者個人の考えをまとめたものであることが付け加えられている。
結論
まず初めに破綻する企業には類似点が多い点から、2つの問いを立てた
A.衰退を認識しながら、そこから脱却できず破綻に至った日本企業の共通点は何か。衰退プロセスから脱却できなかった理由は何か。優良企業との差異はどこにあるのか。
B.破綻企業に見られる事象は特に日本企業に生じやすい性質を有しているのか。日本企業にはそのような事象が生じやすい「癖」があると考えるべきなのか。
本書が見出した発見事実は、
①オーナー系破綻企業と非オーナー系破綻企業には、組織的に大きな違いがあり、別々に分析することが適切であること
※以下②④⑤が問いA、③が問いBに対する答えとなる
②非オーナー系企業には共通の衰退メカニズムが駆動していると考えられる。たとえ、駆動していても平時には問題ないが、事業環境に変化が生じた有事には衰退を引き起こす「サイレントキラー」としての性格を有している
③文化心理学の知見から考察すると日本人が多い組織には、非オーナー系衰退惹起サイクルが駆動しやすい文化的な「癖」があると考えられる。したがって、経営者が気づかないうちに非オーナー系衰退惹起サイクルが駆動してしまい、事業環境に変化が生じるまで気が付かないリスクが存在する。
④非オーナー系優良企業には、破綻企業との共通点が少なくない一方で
・事実をベースとした議論を尊重する規範
・人事部局の統制に基づく公正な人事登用プロセス
の二つがサイクルに「くさび」として打ち込まれており、衰退惹起サイクルの駆動が阻止されている。
⑤オーナー系企業は、オーナー個人の力量に大きく依存する組織的脆弱性が本来的に内在している。破綻企業は、その脆弱性ゆえに衰退し破綻に至ったのに対し、優良企業はその組織的脆弱性を是正する工夫を行っていること。